島前神楽のあらまし

takuhi2007-02-12

(03.3.11)
 島根県の沖あいにある隠岐島、西ノ島では七月中旬から末にかけて各集落毎に例大祭が執り行われる。これらの夏祭りでは隔年毎に大祭(おおまつり)小祭(こまつり)と称して、大祭では神輿渡御が欠かされず行われている。その大祭では神輿渡御に加えて神楽が奉納され、これを島前(どうぜん)神楽と呼んで戦前までは西ノ島・海士・知夫里の三島からなる島前一円で催されていた。
 現在は島前神楽保存会として島前各地の有志が集まってこの神楽を伝承している。しかし、昭和五十年頃までは保存会組織ではなく、社家(しゃけ)と呼ばれて神楽を生業とするいわばプロ集団のみで伝えられていた。
 平成一四年では社家時代の神楽と同様という訳にはいかないが、曲目や楽はほぼ原型をとどめている。その祖型は、「式の神楽」「式外の神楽」「葬祭の能」「神子神楽」「注連行事」「湯の行事」という段階の次第によって構成されている。
式の神楽
前座の舞
寄せ楽(楽のみ全員)・神途舞(男一人舞)・入申(男一人神勧請、舞なし)・御座(男一人舞)・御座清め(女二人舞)・剣舞(男二人舞)・幣舞、散供(男一人舞)
儀式三番の能
先祓(男一人舞)・湯立(男一人、女一人舞)・随神(男二人舞)
岩戸の能

式外の神楽
十羅(男四人女一人舞)・恵比須(男一人舞)・切部(男一人女一人舞)・佐陀・鵜の羽
葬祭の能
八重垣・石山・身売
神子神楽
本格式・舞い児
注連行事
湯の行事
 右の次第は祈願の主旨・神楽の大小によって大注連神楽(雨乞い・病気平癒等)・湯立大神楽遷宮祭等)・大神楽氏神の祭礼等)・浜神楽(大漁祈願等)・神子神楽(地主神祭等)・八重注連神楽(葬祭)の六つに類別されている。もともとは右の様な次第であったが、現在は葬祭の能、注連行事、湯の行事は行われていない。
 楽は胴、太鼓、銅拍子の三つで構成され、囃子は神途舞ぶし・千早拍子・すずか拍子・御神楽遅拍子・御神楽早拍子・能早拍子・能遅拍子・五段舞拍子・急調子の九種類が各々曲目によって神楽歌と共に演ぜられる。
なお、島前神楽では一曲を一座と呼んでいる。
郷土出版社「島根県の神楽」より